イスラエルとハマスの戦争、あるいはパレスチナ問題を理解するために、読むべき本の筆頭として挙げたいのが以下の2冊である。
『ガザとは何か』岡真理(大和書房)
『中学生から知りたい パレスチナのこと』岡真理・小山哲・藤岡辰史(ミシマ社)
パレスチナ問題については、よく「複雑な歴史がある」と言われる。確かにその側面もあるが、イスラエルがパレスチナで行っていることは侵略と虐殺であることは否定できない。1947年、国連がパレスチナの人々の意思を無視してパレスチナを分割し、ユダヤ国家を創設したことは、どう考えてもおかしい。なぜパレスチナ人が難民となり、イスラエルがガザで何を行ってきたのかを考えると、イスラエルの行為がいかに間違ったことであるかがわかる。
ユダヤ問題には長い複雑な歴史があるが、だからパレスチナに対して何をしても良い理由にはならない。イスラエルが行っているのは、パレスチナへの侵略であり虐殺である。「双方に問題がある」のではなく、イスラエルがパレスチナへの侵略を行っている一方で、ハマスは侵略に対する抵抗運動を行っているのである。こうした明確な視点を教えてくれたのが、上記の2冊であった。私自身、パレスチナ問題についてこれまでいくつかの本を読んできたが、イスラエルが間違っていることを正面から教えてくれたのは上記の2冊である。
さらに、上記の本は次のようにも述べている。
「参政権をもつ、日本国家の構成員である私は、イスラエルによるガザのジェノサイドと、その陰でヨルダン川西海岸地区で進行するすさまじい民族浄化の暴力について批判するとき、この日本という国がかつて中国で、朝鮮で、台湾で脱植民地化のために戦う者たちをすさまじい暴力で殲滅してきたという歴史的な事実に対する批判なしに、あるいは植民地支配のため、非植民者の監視管理に起源をもつ入管法によって今、非正規滞在者が人権の番外地に置かれ。毎年のように入管の収容施設で亡くなっている事実を批判することなく、イスラエルを批判することはできません。」
岡真理「ヨーロッパ問題としてのパレスチナ問題」(「中学性から知りたい パレスチナのこと」より)
パレスチナの人々に対する暴力は、かつて私たち日本人が中国や朝鮮、台湾で行ってきた暴力と同じである。100年前の関東大震災の際、中国人や朝鮮人であるという理由だけで殺戮され、言葉が違うというだけで地方の人々が殺されたことと同じなのだ。もちろん、政策レベルで見れば、日本がかつて行った台湾統治、朝鮮統治や満州国建国と、イスラエルがパレスチナに対して行っていることには違いがある。日本の植民地政策は、少なくとも「アジアを欧米の侵略から守り、近代化を推進する」という建前があり、インフラの構築や産業の促進、教育制度の整備などが進められた。その政策には功罪があったが、イスラエルの行為には「功」はなく「罪」しかないと言えるだろう。
イスラエルがなぜ建国されたのか、その背景には反ユダヤ主義が存在する。なぜ反ユダヤ主義が生まれたのか、なぜヨーロッパはユダヤ人と共存する社会を築けなかったのか。この問題は、単に宗教的・民族的な対立に起因するものではなく、15世紀以後、ヨーロッパは非ヨーロッパ地域を暴力をもって蹂躙し支配してきた、その歴史的構造の延長線上に今もあるということにある。それは20世紀で終わったわけではない。その歴史の残滓は21世紀の今なお存在し、そのひとつがパレスチナ問題なのである。問うべきこと、考えるべきことはここなのだ。