1月20日付の毎日新聞によれば、「バイデン米大統領は19日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話協議し、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が終結した後のパレスチナ自治区ガザ地区の統治について、パレスチナ国家の樹立を前提とした「2国家共存」の重要性を強調した。」という。しかしながら、「ネタニヤフ氏は18日の記者会見で「2国家共存」について否定し、ガザ地区を「安全保障面でイスラエルの管理下に置く」などと述べていた。」という。
ネタニヤフはパレスチナをこの世から殲滅したいのであろう。さらにイスラエルは、ハマスを支援するイランやレバノンのヒズボラにも攻撃をしており、イランはイスラエルに報復の可能性を表明している。ハマスのテロ行為に対する報復から始まったこの戦争は、イスラエルとイランの戦争に拡大する状況へとなってきた。これにロシアが関与してくるかもしれない。アメリカ・イスラエルとロシア・イランの対立の構図になれば、さらに大規模な戦争になるであろう。
ただし、アメリカもそこまでイスラエルに肩入れをすれば、国際世論のイスラエル非難の矛先が自国に向けられることはよくわかっている。また、今年は大統領選挙がある。アメリカ国内にもイスラエル非難の声が多い。特に若い世代は戦争の即時停止を求めている。それらを踏まえると、バイデン大統領は今のイスラエルを支持することを直接的に表明することはできないのではないかと思う。また、ロシアはウクライナ戦争をしており、これもイランを本格的に支援することはできないのではないかと思う。だとすると大国の介入はなく、いつまでも問題解決の出口は見えず、戦争が続くという状態になるのではないか。
その一方で、イスラエルの世論はこうした戦争の拡大を望んでいない。このまま戦争が長期化すると、イスラエルの経済に悪影響を及ぼすことになる。イスラエル軍によるガザ地区への攻撃は、もはやジェノサイドといっても良いものになっている。これについて世界の人々はイスラエルを非難している。国際社会からイスラエルは孤立化していくことになれば、イスラエルの世論でネタニヤフ政権への不満が高まるであろう。パレスチナへのジェノサイドは続き、戦争は拡大の一途をたどる。そうなった場合、それでもなお、イスラエルの世論はネタニヤフを支持するかどうかである。そうなれば、ネタニヤフを首相の座から下ろす政変が起こるかもしれない。
もちろん、仮にネタニヤフ政権ではなくなったとしても、イスラエルという国は、その周辺国、つまりはパレスチナを含めたアラブ諸国の人々そのものに対して、イスラエルに敵対的行為を行った場合、人権というものがあるとは認識していないという歴史的な構造は変わることはない。この構造がある限り、イスラエルのパレスチナへの規定を越えた入植とアパルトヘイトは終わることはない。
それではガザ地区はどうなるのであろうか。ハマスがこのままであり続けるとなると停戦はできないだろう。ハマスは排除せざる得ない。ヨルダン側西岸のパレスチナ暫定自治政府がこの先、ガザ地区を統治できるかどうかである。これについては今後イランがハマスとではなく、パレスチナ暫定自治政府とどう関わるかが大きな意味を持つのではないだろうか。そして、これまでイスラエルがパレスチナに行ってきたことに、アメリカがイスラエルを支持しようがしまいが、どう考えても正当性はないことを国際社会の共通意識とするべきである。
今後の中東情勢を見続けていきたい。